本物のようなシマエナガをつくる羊毛フェルトリアル表現
講座詳細

芯になる素体を頑丈に固めるコツ
リアルな表現を目指した造形では、植毛の土台となる芯の硬さや密度が、作品の丈夫さや完成時の見た目に関わってきます。土台用の羊毛を無理なく、効率よく、しっかりと固めていくための方法を学びます。

バランスを決める設計図の作り方
制作を始める前に各部位の比率や大きさをしっかり意識しておく必要があります。完成時のサイズを見越した素体づくりができるよう、比率・形状を視覚化した設計図の作り方を学び、安定した作品づくりの基礎を身につけます。

市販の羊毛では再現できない色をつくる混色技法
鳥の色味をよく観察すると、一見同じように見えても微妙な違いがあり、市販の羊毛だけでは再現しきれない色もたくさんあります。絵の具のように別の色の羊毛を混ぜて理想の色を作る混色の方法と、その際のポイントや注意点を詳しくお伝えします。
部位ごとに適した植毛技法の使い分け
植毛では、通常は「直線刺し」、細かい模様を表現したい部分は「点刺し」といったように技法を使い分けることで、よりリアルな質感に近づけることができます。腹部や背中、顔まわりなど、部位ごとの毛の生え方や流れに対応した植毛の間隔、技法の種類、そしてバリカンの使い方までを解説し、自然な毛並みを再現する技術を身につけます。
羽を薄く、美しく作るための技術
鳥の羽はとても薄く、その質感を羊毛で再現するためには、羊毛を糊でしっかりと薄く伸ばして固める必要があります。均一に薄く伸ばすコツとテクニックを丁寧に解説します。さらに、羽の繊細な色合いはアクリル絵の具で表現し、色の作り方や自然なグラデーションに仕上げるポイントもわかりやすくご紹介します。

図形化して考える方法
絵画や彫刻と同じように、羊毛で作品を作るときは、まずはシンプルな図形から全体の形を捉え、そこから少しずつ細部を詰めていくことが大切です。「シンプルな形から組み立てていく考え方」について、具体例を交えながら詳しく理解を深めていきます。
※上記の画像は講座に対する理解を深めるためのイメージです。
01. 自己紹介と講座を受けて得られること- 自己紹介 - 羊毛フェルト作家になるには - この講座を受講して得られること - シマエナガについて
02. 道具と材料の説明- 材料の説明 - 必須道具の説明 - あると便利なものの説明
03. リアル羊毛フェルトとシマエナガの構造を知る- 一般的な羊毛フェルトとの違い - リアルな作品を作る上で意識すること - 制作の流れ - シマエナガの骨格について - 尾羽の役割、形状 - 風切り羽の役割、形状、種類 - 雨覆の役割、形状、種類
04. 設計図の描き方- 図形化して考える - 部位ごとの比率を意識する - 素体の描く時のポイント
05. 鳥の頭部- ニードル使い方、注意点 - 土台を硬く固めるコツ - 羽毛がついた時の大きさを意識した土台作りのコツ
06. 鳥の胴体- 羽毛がついた時の大きさを意識した土台作りのコツ
07. 羊毛シートを作る- 羊毛を薄く伸ばすコツ - 羊毛を均一にするコツ
08. 羽の型取り- 尾羽 - 初列風切 - 次列風切 - 三列風切
09. 羽の色付け- 尾羽 - 初列風切 - 次列風切 - 三列風切
10. 羽軸の取り付け- 尾羽 - 初列風切 - 次列風切 - 三列風切
11. 尾羽の取り付け- 羽の重なり方
12. 嘴- 嘴の構造 - 樹脂粘土の使い方 - 図形化して考える
13. 爪- 図形化して考える
14. 足- 足の構造 - 針金で骨格を作るコツ - 針金に羊毛を巻くコツ
15. 土台とパーツを取り付ける- 完成系を意識したパーツの取り付け
16. 植毛方法- 植毛で意識すること - 技法の種類
17. 腹部植毛- 植毛の間隔 - 混色 - カットの仕方 - バリカンの使い方
18. 風切羽、雨覆の取り付け- 風切り羽と雨覆の重なり方の説明 - 風切り羽の取り付け - 雨覆の取り付け
19. 背中の植毛- 背中の模様を付ける - 背中の植毛の注意点
20. 頭部の植毛- 植毛の間隔 - 目、口もとの植毛のコツ
21. アイリングを付ける- アイリングを付けるコツ - 瞼の模様を付けるコツ
22. 全体の微調整- バリカンやハサミを使って全体を整える - 歯ブラシや目打ちを使ってふわふわ感を出す
23. 作品の保管方法と飾り方- 作品の保管の注意点 - 丸太を使った例 - 流木を使った例 - 止まり木を使った例
当講座で使用する詳細な準備物につきましては、「カリキュラムの詳細」をご確認ください。
※プログラムの注意事項必要に応じて作成
こんにちは、羊毛フェルト作家のむうと申します。リアルな小鳥の作品を制作・販売しながら、その制作過程をYouTubeでも発信しています。羊毛フェルト歴は約6年、小鳥作品を専門に手がけるようになってからは3年ほどになります。これまでに培ってきた、「まるでそこにいるかのように感じられる小鳥」を作るための技術や観察の視点、そして制作で大切にしている考え方を、この講座にまとめました。
羊毛フェルトを趣味として楽しみたい方、小鳥が好きな方、将来的に羊毛フェルトを仕事にしてみたい方に向けて制作した講座です。ぜひ一緒に、自分だけのシマエナガづくりを楽しみましょう。
本講義を制作する上で、講師さまのみの強みがあれば、どういう部分ですか?
リアル志向の羊毛フェルト作家の中でも、小鳥の羽に関しては特にこだわりがあります。羊毛をできる限り薄く伸ばして仕上げることで、羽特有の軽さや繊細さを表現しています。ほんのわずかしか見えない部分であっても、細部まで丁寧に再現しています。
講師さまご自身は、勉強してきた中で難しかった部分、それを解決するためにどのような努力をされてきましたか?
技術面では、「植毛」が最も難しい工程だと感じています。植毛を進めるうちに、想定より作品が大きくなってしまったり、柄を表現する際に毛の重なり方によって思い通りの模様にならなかったりと、今でも何度も植え直したり抜いたりを繰り返しながら試行錯誤しています。
大切なのは、とにかく数をこなして「この密度で植毛すると、このくらいのボリュームになる」という感覚を掴むこと、そして毛が重なったときにどのような柄に見えるのかを頭の中でイメージできるようになることです。
また、オーダー作品として鳥を制作する際には、同じ種類の鳥であっても柄や色に個体差があり、それを忠実に再現するのは非常に難しい作業です。いただく写真も、光の当たり方によって色味が変わるため、本来の色を判断するのに悩むことが多く、どうしても判断が難しい場合は、依頼主の方にヒアリングを行いながら慎重に制作を進めています。
羊毛フェルトで制作する際、どの部分に一番力を入れていますか?また、それを表現するスキルにはどのようなものがありますか?
特に羽の表現には強くこだわっており、一枚ごとの模様や部位によるわずかな形の違い、そして羽特有の“薄さ”までできる限り忠実に再現しています。羽を作る際に使用する羊毛シートは、刷毛だけでなく指先も使って均一に薄く伸ばし、細部まで丁寧に調整しています。また、色味の繊細なニュアンスはアクリル絵の具で加え、羽の中心にある羽軸は糸を用いて表現しています。
講師さまがお考えになる、羊毛フェルト分野の市場性、展望についてお話ください。
近年のペットブームにより動物を飼う方が増え、「家のペットをリアルに再現してほしい」「亡くなった子の姿を形として残したい」というオーダー依頼は非常に多く、今後も需要は高まっていくと考えられます。ただ、私の場合、小鳥のオーダー作品でも制作に約1ヶ月ほどかかるため、羊毛フェルトを本業として成り立たせるには、作品単価を高めるためのブランディングや工夫が欠かせません。リアル志向の羊毛フェルトはまだ一般的ではありませんが、必要な道具は羊毛とニードル、そして身近にあるもので十分始められる気軽さがあります。一方で、技術を極めれば粘土や彫刻では再現できない“本物のような質感”を表現でき、子どもから大人まで楽しめる奥深い世界です。この魅力がもっと広まり、より多くの方にリアル羊毛フェルトの可能性を知っていただけたら嬉しいです。